【食べる機能を知る 摂食嚥下の5期モデル Part 2 認知期1】

2021年5月10日

「スンドゥブチゲお願いします.」

グツグツ煮る調理音を聞きながら待っている店内は,唐辛子・コチュジャンの香りが充満している.

「お待たせしました.スンドゥブチゲです.」

見ると真っ赤な鍋の中に白い豆腐と落としたての黄色い卵が.見た目にも美しくお腹が鳴ってしまった.さっそく目の前のスプンで,大きい豆腐を少し崩し・一口大に切られた野菜・豚肉をすくい口元へ.口に入れる前から口の中では唾液がすでに充満しており,唇がゆるめばよだれがでそうな状態だ.

今回は,5期モデルの中でも認知期(先行期)のお話です.

5期モデルおさらい

前回概説した5期モデルの詳細を今回から見ていきましょう.まずは5期モデルって何って思われた方のために,概要を再掲します.

認知期(先行期)

まぜは5期モデルの中で最初に登場する「認知期」です.「先行期」とも呼ばれています.何を認知するのか.もちろん食物です.食物を認知し口まで運ぶ段階が今回のお話です.よく5感で食べるなんて言葉を聞きますが,まさにそれです.5感の中でも味覚は口に入らないとわからないので先行期では出てきませんが,それ以外の聴覚・嗅覚・視覚・触覚はこの部分に大きく影響しています.

食べ物を口まで運ぶ間にも,私たちは様々な情報を得て脳で処理しています.例えば上のお話で出たグツグツと鍋を煮る音やトントンと食材を切る音,ステーキのジュージュー焼ける音まで様々な音が料理が目の前に並ぶまでに聞こえてきます.さらに口の中に入れば(準備期)咀嚼音も加わり美味しさに関する情報を知らず知らずに収集しています.他にも食欲をそそる料理の見た目,料理の深い香りも目や鼻から脳へ情報を送っています.

食物が目の前にでたら,脳内では「何を使って食べようか?」,「熱すぎないかな?」,「辛さはどんなものかな?」などと考え,食具を使って1口大にカットしたり,少量すくって冷ましたりします.この過程でも料理をカットする際に食具を介して手へ触覚の入力が行われます.

認知期では,さまざまな器官を使って情報を得ることも大切ですが,手には食事の硬さを含んだテクスチャーの情報を送るのに合わせて,口まで食物を運ぶ機能を有しています.

このように認知期(先行期)に問題なく食べていくためには,認知機能と手などの運動機能が大切になります.